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代数的不等式と解析的不等式と幾何的不等式

○代数的不等式
不等式の問題にはさまざまな種類があり、普通の不等式問題は頑張って解くだけなのですが、特に知識が必要な不等式がいくつかあります。下に代表的な代数的不等式と解析的不等式を示します。教科書でわずかに触れられているのが「シュワルツの不等式」と「チェビシェフの不等式」であり、これらは数式の計算で証明できる「代数的不等式」といえます。

○解析的不等式
しかしこの他に、関数の振る舞いを見て証明する」「ヘルダーの不等式」「ベルヌーイの不等式・ヤングの不等式」「イエンゼンの不等式」というのもよく入試には登場します。これらを知っているのと知らないのとでは、焦りと時間配分が大きく異なります。 

  • 代数的不等式: 相加平均≧相乗平均の関係、シュワルツの不等式、チェビシェフの不等式
  • 解析的不等式: ベルヌーイの不等式、ヤングの不等式・ヘルダーの不等式、イエンゼンの不等式

解析的不等式は別の頁で解説します。
  
○代数的不等式の使い方 
相加平均≧相乗平均の関係は教科書に登場しますが、多くの場合、シュワルツの不等式やチェビシェフの不等式は教科書に名前付きでは登場しません。しかしこれらを使わなければ解けない問題や、これらを使った方が簡単な問題は数多くあります。あるいはこれらの関係を下敷きに作成された問題もあります。したがってこれらの関係はすべて、入試準備には必須です。
シュワルツの不等式は証明なく使ってもいいと思いますが、チェビシェフの不等式の場合は微妙であり、これを使う問題では何かしらの誘導が付くと思います。
なお、不等号に等号が付く場合には、等号が成立する場合の条件を必ず確認してください。意外なところで等号成立条件が成立しないことがあり、間違いを正す好機にもなります。統合条件を確認しないと減点される恐れもあります。好例を示しておきます。

幾何的不等式
代数的不等式・解析的不等式に対して「幾何的不等式」といってもよいのが「三角不等式」と呼ばれる不等式です。三角不等式というと2種類のものを思い出します。一般的に「三角関数を含んだ不等式」も三角不等式といいますがこれは入試用語にすぎず、他に「三角形の3辺の大きさの不等式」という意味の三角不等式
  |a|+|b|≧|c|=|a+b|、|b|+|c|≧|a|=|b+c|、|c|+|a|≧|b|=|c+a|
があり、「三角形のいかなる2辺の長さの和も他辺の長さより大きい」という三角形の構成原則に根差しています。逆に、「三角形のいかなる辺の長さも他2辺の長さの差より大きい」ということから
  |a|~|b|≦|c|=|a+b|、|b|~|c|≦|a|=|b+c|、|c|~|a|≦|b|=|c+a|
が成立します。

三角不等式は別の頁で解説します。

●ふつうの不等式
[B]公式必須の不等式問題(2009年東北大理系1)

[B]不等式のやさしい問題(2015年阪大文1理2)

[C]2次方程式が与えられた不等式問題(2006旭川医大後期1)
判別式と対称性を利用する名問です。

[C]二項定理を使って大小関係を示す問題(2002年名大文系1)

[C]三角関数の不等式を2次不等式で解く問題(2014年慈恵医大3)
普通の不等式問題のキーポイントをほぼすべて含んだ名問です。


●相加平均≧相乗平均
「相加平均は相乗平均より大きい」というものです。この関係はすべての分野の問題で頻出します。項数によって係数などが変わる点に要注意。東大では超頻出の重要公式です。
あまり見慣れませんが、「相乗平均≧調和平均」という関係もあります。
 
3次以下の証明

[例題]

[B]相加平均≧相乗平均の関係を使う間違いやすい問題(2001年神戸薬科大)
この問題は入試問題ですが、やさしい問題なので例題として解説します。
 
[入試問題]
[B]相加平均≧相乗平均を利用する問題(2016年東海大/医113)

[B]球に外接する円錐の最大表面積の問題(2014年一橋大4)

[C]相加平均≧相乗平均を使う図形問題(2012年東大文科2)
 
[C]相加平均≧相乗平均だけでは解けない図形問題(2008年東大理科4)

[C]微分も使う不等式問題(2016年阪大理系2)

[C]空間図形と不等式の問題(2010年日本医科大3)
相加平均≧相乗平均の関係かシュワルツの不等式で解く問題です。

[C]相加平均≧相乗平均の関係を使う問題(2017年慶應大/総合政策3)


●n項の相加平均≧相乗平均
3項くらいまでは証明は簡単ですが、n項の証明はかなり大変です。しかし出題はされるので、紹介しておきます。つい最近、「新しい証明方法」が発見されたので、これも紹介します。また微分方程式を使って証明する方法もあり、これは誘導付きで出題されるかもしれません。
n次の相加平均≧相乗平均のさまざまな証明
[B]n次の相加平均≧相乗平均を証明する問題(2012年神戸大文系3)

[C]n次の相加平均≧相乗平均を証明する問題(2007年横浜市大)


●シュワルツの不等式(またはコーシー・シュワルツの不等式)
これはベクトルの内積と大きさの関係を数式化したものです。シュワルツの不等式は「2乗和の積は積和の2乗より大きい」というものです。特に片方のベクトルが単位ベクトルの場合の不等式は意外性があり、よく出題されます。厄介なのは、この種の問題が、この不等式が思いつけば簡単に解けるのに、そうでない場合はとんでもなくむずかしい問題になる、ということです。この不等式は、確かにに教科書上で例題として示されてはいますが、名前も重要性も解説されていません。

 

こちらはn次でも証明は簡単です。しかし次に紹介する証明方法が思いつかなければハマります。
シュワルツの不等式の証明

[例題]

[入試問題]
[C]tanの加法定理とシュワルツの不等式を使う問題(2013年東京医科歯科大1)
 
[C]シュワルツの不等式が必須な確率問題(2008年東工大3)

[C]空間図形と不等式の問題(2010年日本医科大3)
相加平均≧相乗平均の関係かシュワルツの不等式で解く問題です。



●チェビシェフの不等式
チェビシェフの不等式は、「単調減少な2つの数列の積の平均は平均の積より大きい」というものです。高校数学などでは次の不等式を「チェビシェフの不等式」といいますが、実は「チェビシェフの和の不等式」というのが正しいようで、「チェビシェフの不等式」というと、確率論のもっと難しいものをいいます。

 

n項における証明は、余りに大変で、出会ったら避けましょう。京都大学では 1986年、2010年東北大理系後期と東京大学では1987年に同一問題が出題されていますが、相当準備をしておかない限り、制限時間内で解ける問題ではありません。筆者は悪問だと思います。
例題として、2項・3項の場合を示しておきます。与えられた大小関係で不等号の向きが変わること、証明には項差を必ず利用すること、くらいは頭の隅に止めておきましょう。

[例題]

[入試問題]
[C]チェビシェフの不等式が使える問題(2010年東京医科歯科大/医1)